東京医療センターの重大医療事故(5)からつづく
■■■中野なおクリニック 院長 ■■■
■■■中野なおクリニック 訪問医■■■
院長 循環器科医師
訪問医 内科医師 アルバイト勤務
ここで一旦、訪問医療の中野なおクリニックに話を移す。
【2015年5月13日 訪問医診療レポート】
5/7より入院して胸(腹?)水を抜くこととなる。
『全部とるのはまずいと言っていたのに、結局全部抜くこと
になってしまいました。』
体重は減っていません。
むしろ増えています。
↓
↓
腹水をだいぶ抜きましたので、体力も落ちています。
思ったよりたくさん抜きましたが、今後また貯まってくる
とは思います。
[2015-05-13 診療レポート]
腹水を全部抜かれたと聞いて、医師である訪問医は大変なことになったと理解したであろう。
腹水が全量流出したということは、医師であれば間違いなく内臓を損傷していると容易に想像がつくはずである。内臓損傷は腹水全量抜き以上に致命的である。
重大な事態に至っていると分かっていながら、母の置かれた状況についてなんら説明することなく、たいしたことないような言い方をしている。
内臓損傷はもちろん訪問医の責任ではないが、訪問医として知りえた患者の容体については、当然説明する責務があるはずである。
訪問医は医師として、訪問医としての説明責任、告知義務をしっかりと果たしたとは到底言えない。
この後も母が亡くなるまで4回訪問診療に来宅しているが、腹水の全量流出と内臓損傷が体に及ぼす悪影響についてなにも説明していない。
訪問医は4月28日の時点で、主治医から5月7日に腹水穿刺することと、その後腹水穿刺を繰り返すと診療情報提供書で予告されていた。
腹水穿刺する前から、腹水穿刺を繰り返す予定と伝えられて、危険な処置と捉えなかったのか。診療情報提供書を受け取った時点で、電話でもいいから危険な処置であると、母に注意喚起することができたのではないか。主治医の決定そのものを覆すことはできなかったかもしれないが。
訪問医はアルバイト勤務の医師であるから、当然中野なおクリニックの院長にも相談しているはずである。
中野なおクリニックは、東京医療センターから訪問医療の患者を紹介されている関係で、医療センターに対する配慮が、患者の健康問題に勝っていたのであろう。
東京医療センターの主治医は、母にも私にも内臓損傷について説明することはなかったが、中野なおクリニックは直接の当事者ではなく、責任を負う立場ではないのだから、内臓損傷についてなんらかの説明ができたはずだ。
内臓損傷の事実について母や私が知ったところで、なんの手だてもなく無意味かもしれないが、心の準備はできるし、なんといっても主治医に母の解剖を頼むときに強硬に要求して、解剖所見として内臓損傷の事実を掴むことができたはずである。
内臓が損傷したことを知らなかったがために、解剖を強く要求できなかったことが悔やまれてならない。
中野なおクリニックは、医師としての説明責任と告知義務に違反しているのだから、訪問診療医としての責務を果たしたとは言えないだろう。訪問診療医には、東京医療センターでの治療に対するチェック機能も求められてしかるべきである。
■■■東京医療センター産婦人科 主治医■■■
主治医に話を戻す。
≪≪≪結膜下出血≫≫≫
2015年5月13日、朝起きたら両目が真赤に充血していたので、病院の眼科を予約外で受診、結膜下出血と診断。
白内障の手術は、2月24日と3月3日で、二月半後の5月13日の両目充血は、白内障手術が直接関係していたとは考えられない。
明らかに内臓損傷と腹水の全量流出の悪影響が、両目の充血として現れたと考えられる。
【2015年5月13日 母の日記】
朝、眼が真赤。予約外で眼科に入る。薬が変わり、タリビ
ット点眼薬も貰って来る。
≪≪≪体水分率80%に急上昇≫≫≫
2015年5月13日夜、両目の充血と歩調を合わせるように、タニタ体重計の体水分率データに異変が現れ始め、普段は50%程度なのが、急に80%あたりまで急上昇した。
[2015-05-13 体水分率]
両目の充血といい、体水分率の50%から80%への急上昇といい、明らかに体に異変が生じている現れである。原因としては、メインの腹水溜まりの腹水がすべて流出してしまったこと以上に内臓損傷が強く疑われる。白内障手術が影響して体水分率が急上昇することなどありえない。
【2015年5月14日 母のメール】
あの夜(5月8日)に先生(主治医)からのお話では、早い話が
『入って欲しくない路線に入ってきてしまった』由。
(腹)水を抜いても反って膨らんできたお腹、あの日の苦し
さはなくなったものの、違う苦しさが出て来て、さーてど
うしたものか、ですが、自分のこと、投げ出す訳にも行か
ず何とか食事療法が無いものかと本をあさったりしていま
す。
その上、おまけに昨日は左眼が真っ赤になり手術後どうも
薬があわない様な気がしていましたが又眼科に飛び入り
・・・。これは『治る!結膜炎、』と薬を変えて頂き帰
宅。
[2015-05-14 母のメール]
『(腹)水を抜いても反って膨らんできたお腹、あの日の苦しさはなくなったものの、違う苦しさが出て来て、さーてどうしたものか』
と母がメールに書いているが、
『(腹)水を抜いても反って膨らんできたお腹』
『あの日の苦しさはなくなったものの、違う苦しさが出て来
た』
というのは、明らかに腹水抜きそのものとは別の要因、すなわち内臓損傷によるものと高い確度で容易に推定できる。
『何とか食事療法が無いものかと本をあさったりしていま
す』
と母は書いているが、腹水全量抜きや内臓損傷が原因であるとは気づいていないので、食事療法でなんとかならないかと考えていた。
『左眼が真っ赤になり手術後どうも薬があわない様な気がし
ていました』
は、眼が真っ赤になったのも白内障手術が原因と考え、腹水全量抜きや内臓損傷が原因とは想像だにしていない。
【2015年5月15日 母のメール】
足が凄く浮腫んで立ち居振る舞いが以前より、もっと「よっ
こらしょ!・・・」と。何処までこうやって苦しんで生きて
るのか・・・。20日の予約日まで待てるかどうか
・・・?。パンパンに張ったお腹が苦しくこの頃は痛みも
加わって・・・。
[2015-05-15 母のメール]
腹水を抜いて1週間しか経っていないのに、もう、
『足が凄く浮腫んで』
『パンパンに張ったお腹が苦しくこの頃は痛みも加わって』
とあるのも腹水抜きが直接の原因ではなく、内臓損傷に起因していることは明白である。
【2015年5月16日 母の日記】
ウラの毒ダミ取り等、この苦しさから逃れるのには、働い
て自殺行為しかないと思い至る。
なんとも悲しく、かわいそうで、読むのも辛いが、今の苦しさから逃れるには、ウラの毒ダミ取りなどしながら、無理してでも働くことで自殺を図るように死ぬしかないと考えるに至ったと書いている。この日記の記述をよく読めよ、辻浩介主治医。
この苦しみの原因は、腹水の全量流出ではなく、内臓損傷しか考えられない。
【2015年5月18日 母の日記】
朝、(野菜)ジュースが作れず、飲めず。
【2015年5月18日 母のメール】
この頃とてつもなく体調が悪く、7、8、9、と入院して
腹水を取りましたが、帰宅する前から、他の按配がもっと
悪くなり、20(日)に予約ですが次はどうなります
・・・?。
もういい加減止めて欲しい、もうどうでもいいや・・・!
一杯頑張った!、という気分です。
足の浮腫みがひどく像(象)の足、よたよたと歩くのも大変
です。
兎も角、刻一刻膨らんでくるお腹が、もう苦しくて早く終
[2015-05-18 母のメール]
『この頃とてつもなく体調が悪く』
『帰宅(退院)する前から、他の按配がもっと悪くなり』
『足の浮腫みがひどく象の足、よたよたと歩くのも大変』
『刻一刻膨らんでくるお腹が、もう苦しくて早く終りにした
い』
これらも腹水全量流出による苦しみではなく、内臓損傷が原因である。ただ狡猾で不誠実な主治医が状況を誠実に説明していないので、母は内臓損傷にはまったく気づかず、”卵巣癌”による腹水の影響と受けとめ、諦めの気持ちでいたようだ。
≪≪≪突然の余命宣告≫≫≫
【2015年5月18日 退院サマリー】
医師:
担当医 記 産婦人科 医師
主治医 産婦人科 主治医
担当医 産婦人科 研修医
診断:
(主病名) 卵巣癌末期
(主病名) 腹水貯留
(合併症病名) 気管支拡張症
[2015-05-18 退院サマリー]
2015年5月18日の退院サマリーで、降って湧いたように卵巣癌末期と診断されているが、なにを根拠に卵巣癌末期と診断したのか。
2013年6月11日に主治医はインフォームド・コンセントに、『卵巣癌と診断が確定した訳ではない』、『卵巣癌の診断は手術で摘出したものを病理組織診断することで診断となる』と書いているが、母は手術を受けていないので、『卵巣癌の疑い』ままである。
退院サマリーでの卵巣癌末期の診断は、医師にとっては禁じ手の極めて悪質な『カルテの虚偽記載』にあたる。主治医は取ってつけたようにデタラメな診断をしている。『カルテの虚偽記載は医師法違反』であり、厚労省から行政処分されよう。
腹水穿刺前の2015年4月28日に主治医から母は、
『4/24採血の血液検査は、腫瘍マーカー類は横ばいないしは下がっており、血液検査の結果も申し分ない。』
と説明を受けている。
主治医が2年前に下したclassⅢの診断は以後一度も変更されていない。つまりclassⅢのままということである。
2015年4月22日の主治医のカルテには、
『腫瘤の顕著な増大はないが腹水貯留あり』
と書かれている。
ところが、5月7、8日に腹水穿刺したことで、診断内容が突如激変している。
これは腹水穿刺の際に、研修医が内臓を損傷させてしまったため、大慌てで『つじつま合わせ』のために診断内容を変更したものであろう。
主治医は、『内臓損傷を卵巣癌末期にすり替え』て、事実に反する診断を『捏造』、『でっち上げ診断』したということである。
メインの腹水溜まりの腹水を全量流出させてしまったうえに、内臓を繰り返し損傷したことで、死期も近いと考え、”卵巣癌の疑い”のⅢ期から末期へ、急遽『前倒しで二階級特進』とした。なんという『姑息な帳尻合わせ』。卑怯者。
診断の捏造は明らかに『医師の倫理規範に反する悪質、悪辣な禁じ手』であり、主治医の『医師生命に関わる重大な背信行為』である。
【2015年5月19日 母の日記】
昨日からお腹が痛く、早く寝るが、痛くてよく眠れなかった。
朝食もロクにナシ。午前中も眠る。
朝、また(野菜)ジュースが作れず、飲めず。
【2015年5月20日 15:33 主治医カルテ】
「退院後初回
卵巣腫癌 :adenocarcinoma」
「腹水貯留→5/7-8ドレナージ→セルブロックにて
adenocarcinoma(腺癌)
苦しい、どんどんお腹大きくなってきている」
「腹満憎悪著明++
50kg」
「在宅希望あり、今日は帰宅とするが、『今後近いうちに再
度腹水穿刺必要となる可能性高い』。」
「苦しくなれば連絡を→そしたら入院穿刺ドレナージを」
「厳しい旨、予後が月単位であること、夏はこせない可能性
[2015-05-20 15:33 辻浩介主治医カルテ]
『苦しい、どんどんお腹が大きくなってきている』というのは、腹水の全量抜きではなく、内臓損傷が原因である。
訪問診療の中野なおクリニックの院長が翌月6/18に、
『今そんなこと(腹水抜き)したら死んでしまうよ。』
と言っている。
メインの腹水溜まりの腹水を全量流出させてしまって、内臓を損傷させているのに再度腹水穿刺必要とは、主治医は正気か。母を死なせるつもりか。なんと恐ろしい鬼畜の医師であることか。医師としての基準に満たない医師未満の落第医師である。
主治医は、腹水穿刺を繰り返せば急速に体力が低下し、全身状態が悪化して、死期を早めるだけということをまったく理解していないのか。理解していれば、メインの腹水溜まりの腹水を全量流出させ、内臓を損傷したばかりなのに、さらに『今後近いうちに再度腹水穿刺必要』などとは書かないだろう。
腹水穿刺を繰り返せば、死期を早めるだけであると理解していなかったのなら、完璧に医師失格である。すみやかに医師免許を返上すべし。
主治医は、研修医が内臓を損傷してしまったので、腹水がどんどん溜まるだろうと考え、『今後近いうちに再度腹水穿刺必要』と書いたのか。
主治医は責任逃れから、内臓損傷が原因であると認識していながら、母にも私にもいっさい説明しようとしなかった。医師の倫理規範に反した卑怯で卑劣な医師である。こういう医師は医学界から早々に退場したほうがいい。
【2015年5月20日 母の日記】
主治医先生から利尿剤の新しいのを頂く。
月単位で悪くなる由。夏は越せぬ?
元看護師長さんへ行って話す。
【2015年5月20日 母のメール】
7、8、9と苦しくて腹水を抜く為に入院していました。
が、いたちごっこの始まり。
『一番入って欲しくない路線に入ってしまった』と。
今日の話では今後、月単位で6月か7月で人生の終焉を迎え
るようになるとか・・。
元々体が丈夫なので、すんなりとは終わらせてくれない、
暫く苦しみそうです。
[2015-05-20 母のメール]
【2015年5月20日 18:11 主治医カルテ】
「腹水貯留+++」
「腹満強く入院希望あれば入院でお願いします」
【他病院紹介】 他病院への紹介
産婦人 → 訪問診療クリニック[紹介]
紹介年月日:2015-05-20
[2015-05-20 18:11 主治医カルテ]
【2015年5月20日 診療情報提供書 主治医→訪問医】
「2日に分け、計1700mLをドレナージしました。セルブロ
ック標本を作成しましたところ、卵巣漿液性腺癌の可能性
が最も高い結果でした。」
「5/20に当院婦人科外来を受診されましたが、腹部膨満感は
更なる増悪傾向を認めてきており、かなり病勢が進行して
きている状況です。」
「今後月単位での進行が予想されると思われます。」
[2015-05-20 診療情報提供書 主治医→訪問医]
『卵巣漿液性腺癌の可能性が最も高い』から、余命幾ばくもない(3カ月、実は1カ月)といえるのか。
病理組織診断報告書には『卵巣の漿液腺腫瘍の可能性が示唆される』で、『卵巣漿液性腺癌の可能性が最も高い』とは書かれていない。『可能性が示唆される』を『可能性が最も高い』に置き換えているが、意味するところが大幅に異なる。
主治医は、勝手に都合よく表現レベルを上げて、偽りの『診療情報提供書』を書いている。
『腹部膨満感は更なる憎悪傾向を認めてきており、かなり病勢が進行してきている』のは、”卵巣癌の疑い”が原因ではなく、内臓損傷に起因するものである。病勢が進行と書いて、病名が何であるか明記していない。真の原因を知りながら素知らぬふりをする腹黒くあくどい医師。実に悪質である。
悪質で狡猾な主治医は、『内臓損傷を卵巣癌末期にすり替え』て責任逃れを図っている。実に汚いやり口である。
【2015年5月20日 病理検査レポート(組織診)】
《病理組織診断報告書》
病理診断: (Ascites, other extractions,)
Adenocarcinoma, see descritions!
【所見】
摘出された検体は腹水セルブロックです。
組織学的にはクロマチンが増量し腫大した核、明瞭な核小
体を有する細胞が小型の乳頭状様小集塊又は孤立性に多数
認められます。これらの細胞は
CK-AE1/AE3(+), CK-7(+), CK-20(-), PAX-8(+),
ER(+), PgR(+,rare),WT-1(+,rare), FOXA1(-),
CDX-2(-), GATA-3(-),TTF-1(+,focal),
napsin A(+,rare), SP-A(-), CA125(+), P53(+),
calretinin(-)
の形態を示しています。低分化の腺癌です。卵巣の漿液腺
腫瘍の可能性が示唆されるものの、部分的にTTF-1が陽性
を示すため、肺や甲状腺の検索が望まれます。
[2015-05-20 病理組織診断報告書]
≪≪≪不可解な余命宣告≫≫≫
2015年5月20日、腹水抜き後初めての診察で、主治医はパソコン画面の方を見ながら、母や私には眼もくれず、表情を変えることもなく素人にはチンプンカンプンな専門用語が羅列された、『2015-05-20病理組織診断報告書』のプリントを淡々と読み上げたうえで、
『ぶっちゃけて言うと、この夏は越せない、余命は後3カ月で
す。』
と、いきなり宣告。
余命宣告をするのに、こんな乱暴な言い方あるだろうか。
余命宣告は当初母一人に行われたが、『びっくりした』母が待合室に出てきて、『大変なことになった』から『一緒に話を聞いて』と、私を診察室に招き入れ、再び宣告を受けた。
母の驚き方からも、自身が余命宣告を受けるような、重篤な健康状態にあるとは思ってもいなかっただろうし、主治医からも重篤な状況で余命幾ばくもないとの説明をこれまで一度も受けていなかったことが分かる。
通常、余命宣告をする時は、家族付き添いで診察を受けるよう、前もって伝えるはずである。主治医の対応は異常で理解しがたい。
2年におよぶ主治医の診察で、一度たりとも『余命の話は無く』、『classⅢのまま推移』していたので、のんびり構えていたが、あまりに『突然で初めての余命宣告』に何が起きたのかよく理解できず、ただ茫然と聞いていただけだった。
2015年4月28日に『腫瘍マーカーは横這いないしは下がっていて、血液検査結果も問題なし』と主治医は診断した。つまり
”卵巣癌の疑い”は少なくとも悪くはなっていないということ。
4月28日に医療センターから帰宅した母は、嬉しそうに主治医の診断内容を私に話してくれた。”卵巣癌の疑い”の末期などという思いは、母の頭の片隅にもなかった。
2015年5月8日のメインの腹水溜まりの腹水の全量流出と内臓損傷を経て、僅か22日後の5月20日に突然の余命3カ月宣告。
主治医は余命3カ月と宣告したが、宣告後わずか一月で亡くなっているので、実際は余命1カ月であった。余命3カ月というのは、さすがにいきなりの余命1カ月宣告はないと考え、少しさばを読んで宣告したにすぎない。
まるで天国から地獄に突き落とされたような、落差の激しい主治医の診断内容に、全身から力が抜けてまったくの無気力状態に陥ってしまった。
2015年5月20日の余命宣告に先立つ5月18日の退院サマリーで、『卵巣癌末期』と診断されているようだが、カルテ上に記録されているだけで、患者、家族には知らされていない。退院サマリーは内臓損傷隠しのための、ただの『偽装工作』にすぎまい。
余命宣告の際は、病名も告げずに余命3カ月と言った。卵巣癌が原因ではないと分かっていたから、卵巣癌という言葉をあえて避けている。
余命宣告というのは通常、2年、1年、半年と短くなっていくものなのに、事前に何の予告もなく、いきなり余命3カ月というのは、突発的な内臓損傷という不都合な事態に遭遇して動転、動揺した主治医が、隠蔽を目的に卵巣癌にかこつけて『でっち上げた』『まやかし診断』であろう。
”卵巣癌の疑い”での余命宣告であれば、医学的見地からいって余命1年、余命半年、余命3カ月と順次宣告期間が短くなっていくものであるが、突発的に余命3カ月、実際は余命1カ月宣告をしたということは、”卵巣癌の疑い”ではなく内臓損傷が原因であると白状したも同然である。
内臓損傷の事実が露見して外堀が埋まり、突如余命3カ月、実際は余命1カ月宣告をして、内臓損傷を実質的に認めたことで、内堀も埋まった裸城で主治医は籠城。進退窮まったか、主治医。
いままで親身になって2年間も診察してきたのに、あまりにそっけなく、まるで人が変わったかのように、冷淡で冷酷な余命宣告となったのは、主治医の心の内に間違いなく『後ろめたいもの』があったからだ。
腹水の病理組織診断報告書を幾度も読み返したが、どこにも余命3カ月と読み取れるところはない。
そもそも余命にかかわることなどまったく書かれていない。腹水の病理組織診断から、余命3カ月という予測が可能なのか。ヤブ医者ならお茶の子さいさいで、できるのだろう。
この時点までの主治医のすべてのカルテからも、余命3カ月宣告の根拠となるような記載を見つけることはできない。
余命3カ月というのは、研修医が腹水穿刺の際に内臓を損傷してしまったことで、余命いくばくもないと判断した主治医が、月数に余裕を持たせて、患者、家族が受ける衝撃をいくらかでも緩和しようとしたものである。
読んで聞かせたところで理解できないような、専門用語が羅列されただけの病理組織診断報告書を、余命宣告の前にわざわざ読み上げたのは、もっともらしい理由づけとして余命宣告の根拠にしようと考え、『目くらまし』に使ったものである。
ただ余命宣告を受けた後も、余命宣告以上に生きる人は多く、そんなもの当てにならないと、私は自分に言い聞かせ、まだまだ大丈夫と努めて考えていた。
【新潟大学名誉教授、故安保徹先生の著書より】
『余命宣告とはそもそも抗がん剤治療に伴うもので、抗がん
剤治療も受けていない患者に余命宣告などあり得ないので
はないか。』
抗がん剤治療を母は受けていない。主治医による余命宣告は、原因を偽って余命宣告という医学用語を借用、悪用した『なんでもありの出まかせ宣告』にすぎない。
東京医療センターの重大医療事故(7)につづく